環状織機

 織機というものをご存じだろうか。着物、ワイシャツ、ブラウス、コート、ズボンなど織物を作る機械である。(Tシャツはニット機で作るニット製品)繊維機械を語る上では外せない、いかにもメカメカしい機械である。

 通常の織機は基本的に昔からある機織り機と原理は同じ、上下に分割されたタテ糸(経糸)にヨコ糸(緯糸)を通して、オサ(筬)で打ち込んで、経糸の上下を逆にしてまたヨコ糸を通していく。横から見ると下の図のようになる。

織物断面

 さて、今回紹介する環状織機というのは豊田佐吉が1906年に発明したものでトヨタ産業記念館のロビーに動態保存されている。これはすごい発明なのである。ぜひともご見学あれ。

環状織機なんですごいのか

 通常の織機はタテ糸が直線状に並んでいるが、この発明はタテ糸を環状にして、ヨコ糸をぐるぐる回そうというものだ。これはすごい発明である。通常の織機はタテ糸が直線状にあるため、ヨコ糸は直線状にその織物の端から端まで(幅分)だけ飛ばせばよい。飛ばせばよいのだが、このヨコ糸を飛ばす(通す)方法がいろいろ発明されてるぐらい簡単なものではない。その話は長くなるのでまた別の機会に。

普通の織機(絵が下手)

 しかし環状織機では織物の端がない。さて、じゃあ糸はどうやって動かすの?織物断面を見てもらえばわかるが紙面の上下はタテ糸があり、糸を持つことができない。右側もオサがいるので無理。紙面のこっちと向こうが開いているわけであるが、環状織機の場合それもできない。ヨコ糸は完全に浮いているのだ。でも回っている。ここがすごい。

 でもやはり無理があったのか市販はされなかったらしい。これは私も無理な機械だったんだなと思っていた。しかし現在環状織機が実際に稼働している現場があったのである

実は現在動いている環状織機がある

 現在環状織機を作っているメーカーはStarlingerというオーストリアのメーカーで(他にコピーメーカーもある)こんな感じ↓

starlinger circular loom

 絵が下手で申し訳ない。 本物はstarlinger社のページで見てほしい。これ実は織っているのは糸ではなく、テープである。土のうの袋や重量物を入れるビニール袋でテープが編んであるやつを見たことがあると思う。それを作る機械。最初にテープならできると開発した会社がこの会社なのかは知らないが、現在売っているのはこの会社しか私は知らない(コピーメーカーはある)。もしこのテープ袋用環状織機の歴史を知っている方がいたらぜひともいろいろとお話を伺いたい。よろしくお願いします。

 環状織機は(たぶん)タテ糸越しにヨコ糸を動かしているのだと思うが、普通の綿では切れてできなかったのだろう。でもビニールテープなら強くて切れないし、ひらべったいのでできるのだ、用途を変えれば発明が生きてくる良い例だ。

 実際動いているのを見ると4、5メートルの直径で円形に並べられたタテ糸(タテテープ)の間を糸を抱いたシャトルが複数個すごいスピードでまわっている。タテ糸は当然ヨコ糸が入ったら位相が変わるのでそこも忙しく動いている。これが動力(モータ)が一つで全部その軸に連動して動いているのだ。感動である。

 実は見本市会場でstarlingerの方に「中見せて」と言って、断られたことがある。でも「100%メカニカルで動いている」といわれた。100%メカニカルで動いているから、見たらマネできてしまうし、実際コピーメーカーがあるので中身は見せてくれのであろう。ホームページもほとんど機械の外観だけしか写真がない。

繊維機械すごい。

Bishnu SarangiによるPixabayからの画像

環状織機” に対して2件のコメントがあります。

  1. 北丸豊 より:

    トヨタの博物館にもありますよ。

  2. 永野 豊 より:

    弊社ではノルウェーMandals社のサーキュラー織機で消防用ホースを製造しています。

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